第25章 追憶
私、救急処置室って、当たり前だけど初めて入った。
カチャカチャと器具を揃える音や、私に付けられた心電図を取るための機械音が静かな部屋で大きな音に聞こえる。
桜太にぃ、さっき顔を合わせたのに何も言わなかったな・・・
ああいう時の桜太にぃは、過去の経験上・・・物凄く怒ってる時の方が多い。
お説教タイムが到来したら、影山・・・遠慮なく逃げて。
影山は何も悪くないんだから。
数え切れない位のため息のひとつが、また飛び出す。
ー 城戸先生、チェックお願いします ー
「分かりました、すぐ行きます」
看護師がドアの向こうにいる人に声をかける。
城戸先生?
・・・待って?
桜太にぃが診察するの?!
それっていいの?!
だって家族だよ?!
それとも、たまたま同じ〖 城戸 〗って言う名字のお医者さんがいるの?!
よく分からない焦りが、鼓動を早くする。
桜「見せて?」
急患用に作成されたカルテを渡され、桜太にぃがそれに目を通していく。
・・・桜太にぃの、方か。
まさかの解答に、身を固くした。
ふぅ・・・と、桜太にぃが息を吐くのが聞こえる。
桜「紡?」
『は、はい!』
桜太にぃからの呼び掛けに、思わず大きく返事をしてしまい、近くにいた看護師に驚かれた。
それを見た桜太にぃが、ため息をつきながら、そんなに大きな声出さなくていいから、と漏らした。
『だって・・・怒られると思って・・・』
桜「怒られる?・・・誰に?」
『・・・桜太にぃ・・・かな』
桜「俺に?」
桜太にぃから目を離さずに、コクコクと頷いた。
『だって・・・怒ってる、かな?・・・って思って・・・』
カルテに記入しながら、桜太にぃは私をチラリと見る。
桜「・・・怒ってるよ。それも、凄ーく、ね」
・・・ですよねぇ。
凄く、じゃなくて。
凄ーく・・・なあたり、数時間単位のお説教タイムは確定・・・
それどころか、日を跨いでのお説教タイムの可能性さえ見えて来た。
桜「紡?ご希望のお説教タイムは、家に帰ってからジックリするから」
いえ、希望はしてないです・・・
出来れば穏やかに過ごしたいです・・・
ー ダメですよ、城戸先生。例え妹さんでも患者を脅かすのは ー
いかにもベテランっぽい看護師さんが、作業をこなしながら桜太にぃに声を掛けた。