第32章 不協和音
澤「西谷···お前は朝っぱら全力で元気だな···」
西谷「ウス!朝練なかった分、パワー全開っス!で、こんな所で何やってんスか?」
澤「あぁ···まぁ、なんだ···」
私がいる手前、あまり話題を掘り返したくないのか澤村先輩が言葉を濁す。
西「なんスか?」
もし、さっきの話をされて西谷先輩のこのテンションで大騒ぎされたら···ちょっと面倒かも知れない。
そう思うと、なんだか居心地が悪くて。
『西谷先輩!アイス···溶けますよ?』
そう言って話をすり替えるのが精一杯だった。
西「ヤベッ!ほら紡、早く反対側から食え!溶ける!!」
『反対側って、その半分っていう意味ですか?!』
西「いーから早く!ほれ!」
突き出されるアイスを、躊躇いながらひと口かじる。
道「え?!ウソでしょ?!澤村がいるのに?!」
西「こんなの大した事じゃないっスよね、大地さん?」
澤「まぁ、西谷だからな」
···そういう問題でもないと思うけど。
西「んで、3人で深刻な顔してなんの話を?」
道「あ、それはね···」
マズい···
『西谷先輩アイス美味しかったです!お礼に飴ちゃんあげますから一緒に私の教室行きましょう!』
西「お、おぅ。急に大声出してどうしたんだ?」
残りのアイスを咥えた西谷先輩の腕を掴み、その耳に顔を寄せ内緒話をする。
『昨日面白い飴ちゃん見つけたんです。キャッチコピーは···初恋の味とファーストキスの甘さ、だそうです』
それは本当の事。
慧太にぃと買い物に寄ったお店の棚に、新発売!店員イチオシ!って書いてあって、慧太にぃと面白い~って言いながら買った物。
実際は白桃味とさくらんぼ味だったけど。
西「なにぃ?!···それはぜひとも、食べてみたい!」
『でしょ?!じゃ、予鈴がなる前に早く行きましょう。···大地さん、道宮先輩お邪魔しました!』
道「あ、ちょっと?!」
呼び止める道宮先輩を振り切って、西谷先輩の手を取り教室へと駆け出した。
あのままいたら、きっとまた···さっきの話を持ち掛けられる。
困ってるのに、協力したくない訳じゃない。
ただ···相手と、その場所が。
だから、道宮先輩···ごめんなさい。
心の中で何度も謝りながら、教室までの廊下を小走りで進んで行った。