第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
「おれの兄・・・ドフラミンゴもドレスローザに戻ろうとしている」
クレイオから目を逸らし、苦しそうな声で呟く。
「それも・・・一番許されない形で・・・」
リク王家をどうするつもりだ、ドフィ。
今更ドンキホーテ家が帰還しても、ドレスローザの安穏な日々を壊してしまうだけ。
「おれはドンキホーテ一族の人間として、兄の凶行を止めなければならない」
「ロシナンテのお兄さん・・・そんなに怖い人なの?」
「怖い・・・? それならまだマシだ」
ドフラミンゴの狂気は底が知れない。
海軍が把握している残忍さを極めた悪事の数々は、その男と血が繋がっていると思うだけでも恐ろしいと感じてしまうほどだ。
「“生まれただけで偉い”・・・あいつは天竜人であることを世界一の権力だと思っていた。クレイオ、お前を苦しめる天竜人と同じようにな」
「・・・・・・・・・・・・」
「それを奪われたあげく、ゴミ同然だと思っていた人間達から拷問を受けたドフラミンゴは、その怒り、憎しみ、恨みを全て狂気に変えて復讐しようとしている」
そもそも、ドフラミンゴがドレスローザを狙っているというのも、現時点では未確認情報にすぎない。
根も葉もない噂である可能性も残っているが・・・
「おれには分かる・・・弟だからな・・・」
天竜人として生まれながら、誰よりも心優しく慈悲深かった父と母。
両親に無かった傲慢さ、冷酷さを二人分凝縮して生まれたような兄は、まさに悪魔の申し子だ。
「ドフィは平和で美しいドレスローザを壊す」
銀白の月光がロシナンテの苦痛の表情を照らす。
両親に似て心優しい彼にとって、実の兄を討たなければならないという事実は簡単に飲み込めるものではない。
それでも・・・
「弟だからこそ・・・おれはあいつを見過ごすわけにはいかねェ」
ドンキホーテ・ロシナンテ。
彼は今、兄のように非情にならざるを得なかった。