第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
しかし、その冷たい空気を壊したのはモネ自身の明るい声。
「なんてね。ごめんなさい、そんなに怖がらないで」
「え・・・?」
気が付けば二人を囲んでいた白い雪は消えていた。
「貴方は若様に気に入られている。若様に空へ連れてってもらえるほどに」
モネは開け放した窓から月を見上げ、その綺麗な瞳を揺らす。
「幸せなことよ、若様ほどの男は他にいない。その彼の腕に抱かれながら、世界を見下ろすことができるんだもの」
夜空に向かって両手を広げる、ドフラミンゴに一途な想いを抱く雪女。
その細くて長い腕に雪が集まり、まるで白鳥のような純白の翼が現れる。
「貴方はそうしていればいい。でも、私は自分の力で、若様と一緒に飛ぶことを選ぶわ」
雪の翼では空を飛ぶことはできない。
でも、いつか必ず・・・
「若様が見たいと思っている景色を見せてあげられるよう、そして、その景色を同じ高さから私も見ることができるよう・・・」
クレイオ、貴方には何の力もない。
若様にとって貴方は暇つぶしでしかない。
若様に愛される貴方に妬いてしまうけれど、うらやましいとは思わないわ。
「私はいつかこの両腕を翼に変える」
それはモネのドフラミンゴに対する恋心であり、忠誠心。
「若様のためなら、身も心も・・・命も差し上げる覚悟よ」
それは雪のように冷たく、美しいプライドだった。
モネはのちにドレスローザを離れ、パンクハザードで科学者シーザー・クラウンの秘書となる。
そして、トラファルガー・ローとモンキー・D・ルフィによって破壊された研究所とともに堕ちながら、彼女は最期までドフラミンゴに忠誠を尽くした。
“さよなら、若様”
“あなたこそが海賊王になる男・・・!!!”
もし、研究所とともに死ぬよう命令を下したドフラミンゴの苦悩する姿を見ることができていたら、モネはどのような表情をしただろうか。
きっと・・・
「ドフラミンゴは幸せね・・・貴方のような人に愛されて・・・」
そう言ったクレイオに見せた少女のような笑顔で、最期の力を振り絞り、ドフラミンゴを抱きしめていたかもしれない。
だがそれはもう、誰にも分からないことだった────