第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「このおれを試そうとしているのか? つくづく可愛げのねェ女だ」
団扇のように大きな手は、クレイオの顔など石ころのように掴んでしまう。
強引に引っ張って上を向かせると、冷笑を浮かべながら頬の肉に指を食い込ませた。
「だが、そこがいい」
自分に媚びへつらう人間など数多くいる。
だが、お前はどうだ?
おれのすること全てを受け入れるくせに、心は決して許そうとしない。
「おれが誰かを殺すのを見てェなら、あとでプールにいた女を何人か連れてこよう。お前が満足するまで切り刻んでやる」
「やめて」
クレイオはドフラミンゴの手をどけると、代わりに首に腕を回した。
仰向けに横たわる自分の身体に重なるよう国王を抱き寄せ、恐怖をなるべく表に出さないようにしながら囁く。
「血なんて見たくはない。そうでなくたって、この国には血のように赤いバラで溢れているのに・・・」
何があろうと、戯れのために殺して良い命などない。
人間であろうと、オモチャであろうと・・・
貴方は私の命すら虫けら程度にしか思っていないだろうけど、一度失ったら二度と取り戻せないものだってあることを貴方も知っているでしょう。
「フッフッフッ・・・だが、皮肉なものだな」
ドフラミンゴはズボンのベルトを外しながら、赤い口紅を引いたクレイオの唇に口づけた。
「赤にウンザリしているようだが、お前の唇は何よりも真紅が似合う」
その口紅はおれが贈ったものだろう。
お前の白い肌によく映えている。
そして、胸元に光る真珠も。
「言え、いったいどうすればお前は機嫌を直す?」
「・・・だったら、今日はもう私を抱かないで。若い女の子の身体を堪能してきた貴方の相手をするのは惨めなだけだから」
この感情は決して嫉妬とか、そういう類のものではない。
もっと・・・“根深い”ところから込み上げてくる醜い感情だ。