第6章 真珠を量る女(ロー)
「ローは・・・このことを知っているの?」
「いや、キャプテンには内緒で来た。彫る理由を聞いたら、絶対に賛成しないだろうから・・・」
でも、覚悟というのはそういうものだろう。
誰が何と言おうと、一度決めたら動かすことはできない。
「三人分の刺青をいっぺんに彫るのは無理だってことは承知だ。特にべポは白熊だし・・・断られても仕方がないと思ってる・・・!」
それでも三人はクレイオに向かって深々と頭を下げた。
そんな彼らの想いを、どうして踏みにじることができるだろう。
「ローは明日の朝、出航すると言っていた・・・徹夜をしたとしても、あと18時間しかない」
それだけの時間で、三人分の刺青を完成させなければいけない。
「それにべポ君は白熊だから、人間の皮膚とは勝手が違う」
その言葉に、シャチ達は失望の色を顔に浮かべた。
しかし、クレイオはニッコリと微笑む。
「昔、動物の死骸で練習をした成果がようやく発揮できそう」
「え・・・?!」
「18時間で三人はやったことがないけれど、先代ホリヨシは短期間で何百人もの奴隷達に刺青を施した。私にできないわけがない」
「そ、それじゃ・・・!!」
彼らの願いを聞き入れなかったら、それこそ伝統ある彫り師の名折れ。
「貴方達の心もまた、ホリヨシの信念に共鳴する」
海賊ではない私は、ローと一緒に海に出ることができない。
だから、刺青を彫ってあげる代わりに一つだけ、貴方達にお願いがある。
「べポ君、シャチ君、ペンギン君・・・どうか必ず、ローの“帰る場所”でいてあげて」
ローが自分の信念のために貴方達と別れる選択を取ったとしても・・・どうか、彼の帰りを信じて待っていてあげて欲しい。
そうしないと、彼は本当に孤独になってしまう。