第14章 【切】新しい私の生まれた日/カゲヤマトビオ
城を飛び出して私は何処へ行こうと言うのか。人間だと言いながら空を飛ぶ私は、人間ではない。私は、トビオと同じ弓使いの筈だった。ただの人間の筈だったのに。空高く飛んでる筈なのに、何十kmの離れた先の景色が見える。声が聞こえる。
「…人間じゃ、ない。」
酷いよ。こんな風になる位なら、私は死んだままでよかった。こんな風になってまで生きていたくなかったよ。酷いよ、トオル。なんで、私の事生き返らせたりなんかしたの。クロもキヨコちゃんもそれでいいの?私はイヤだよ…。悲しいのに涙が出てこない。魔族になったから?魔族は涙も出ないの?そんな事を思いながら、大分遠くまで飛んできてしまった。そして、森の方から、聞き覚えのある声が聞こえた。
「…トビオ!」
トビオの声だ。声のする方へと急いだ。
「トビオ!」
トビオの姿を見つけ、私は地上へと降りた。あの時より背が伸びていて、髪も少し伸びてる。でも、彼は間違えなくトビオだ。トビオは私の姿を見るなり弓を構えた。
「…魔族!」
トビオの弓から放たれた矢は、私の頬を掠めた。
「トビオ!私だよ、ハルカだよ!」
向けられる殺意に満ちた瞳。
『大王を倒した勇者は人間から存在を忘れられる。』
嗚呼、そうか。人間だったハルカは死んだ。トビオの中に私はいないんだ。兄妹のように育ってきた記憶も、トオル達と共に大王討伐の為に旅をした記憶も、大王を倒し、平和な世界が訪れたら二人で暮らそうと約束したことも。なくなってしまったんだ。そう思うと、心の奥底から湧き上がってくる黒い感情。
「トビオも死んで大王様に生き返らせてもらえばいいんだ。そしたらまた一緒にいられるね。」
「何、ワケわかんねーことを、」
放たれる矢を交わし、トビオとの距離を詰める。弓使いは矢を構える為に時間を稼いでくれる前衛がいないとダメだよね。ほら、接近戦に持ち込めべ弓なんて使えない。私がされたみたいに、心臓を一気に貫けばいい。そしてトビオも魔族になるの。
「カゲヤマから離れろ!」
トビオの心臓を掴もうと伸ばした手が結界に阻まれた。そして、私達の間に飛び込んできた小さな剣士────いや、勇者。