第27章 緋色の夢 〔Ⅻ〕
思わずその場に膝を着きそうになって、どうにか足に力を入れて踏みとどまったというのに、白ルフたちは嬉しそうにピィーピィーと寄り集まって来たから鬱陶しかった。
── くっそ、あっち行けって!
絡みついてくる白ルフたちに苛立って声を荒らげて振り払うと、ルフたちは仕方なさそうにピィーと鳴きながら側を離れて飛んで行った。
騒がしい白ルフたちが向かう先には、白く巨大な光がある。
空間の純白さを司るような大きなそれが、見ている前で突然、動き出したから驚いた。
首をもたげて大きな翼を羽ばたかせたそれは、巨大な白い鳥だった。
ワシのように鋭い爪をもつ、ルフと似た巨鳥。
白ルフたちをざわめかせるそいつが、ゆっくりと目を開いてこちらを見た。
『お待ちしておりました、我らの愛しき「マギ」よ。ああ、しかし……、貴方様は忌むべき堕転に成り果ててしまわれたのでしたね。おいたわしいことだ……』
憐れむような眼差しを向けられて、無性に腹が立ってくる。
── おいっ……、てめぇかよ? 俺をこんな場所に引きこんだのは!
『ええ、「マギ」よ。そなたをここへ呼んだのは、我ですとも』
── ふざけんなっ! さっさと俺を元の場所に戻せ!
ギロリと睨み付けたのに、白い巨鳥は少しも動じなかった。
ただ変わらず寂しげに、まっすぐにこちらへ視線を注ぐ。
『……やはり忌むべき堕転に成り果てた貴方様には、ここは苦痛ですか……』
── ああ、気分がいい場所じゃねぇーよ。だるくて仕方ねぇ……。
身体が妙に重くて、うまく力が入らない。
それなのに、ルフたちが放つ白い光を受け入れようとしてしまう身体が、足を繋ぎ止めている感覚がして気分が悪い。
それがマギの体質のせいなのか、望まないルフの加護のせいなのかは知らないが、早くこの場所を離れたかった。
『そうですか……。ですが少しの間、我慢していただきたい。そなたに頼みがあって、わざわざ使いをよこしてまでお呼びしたのですから……』
── 俺に頼みだと?
『ええ、貴方様にしか頼めない、大事な頼みです。そのために、我らルフ鳥の源とも呼べる巣穴に、お招きさせていただいたのです』
そう言って白い巨鳥が手招くように巨大な翼を動かすと、身体が勝手に浮き上がって、巨鳥の方へと引き寄せられていった。