第16章 緋色の夢 〔Ⅰ〕
薄暗い洞穴の中を、ハイリアはひたすら歩いていた。
祠の入り口に足を踏み入れたのは、随分前のことだ。
それなのに、林に抜ける道はいつまでたっても見つからない。
もうどれだけの時間が経過したのだろうか。
ここへ来た瞬間から、なぜか暗闇の入り口は消えていた。
暗い入り口に入り、光のような場所を抜けたと思ったら、不思議な魔法陣の上に立っていたのだ。
それから薄暗い洞窟のような場所を、出口を求めてただ歩き続けている。
道はいくつも分かれていて、もう何度道を曲がったり、戻ったりしたかわからない。
「本当になんなの、ここは……」
この祠は変だ。なんだかおかしい。
じめじめした小さな穴の中から、猫が無数に出てきて追いかけられたり、水だと思って近づいた湖が青い炎を灯して燃え始めたり、獣のうなり声と共に、雨のように蛇が降ってきたり、妙なことばかり起こる。
まるで何かのトラップだ。
さっきなんて、妙な液体が天井から垂れてきて、危うく全身に浴びそうになった。
避けた際にかすってしまった右腕が、さっきから痺れて痛い。浴びた皮膚は赤くなり、指先は感覚がなくなってきている。
何かの毒かも知れないと思うと、苛立ちが募った。
ここがいったい何なのかは知らないが、間違うと命を奪われてしまう場所だということは確かだった。
みんなに助けられてここにいるのだ。ムトやジファールに、絶対に生きると約束したのだ。こんなところで死ぬわけにはいかない。
この洞窟が、どこへ続いていようと歩くしかないのだ。早く出口を見つけなければいけない。
青い炎が灯る細い通路を抜けると、岩で囲まれた洞窟の最奥地まで辿り着いた。
大きな広い洞穴の奥には、巨大な扉が見える。
星の紋様が刻まれた扉だ。あれが、出口だろうか。