第13章 温泉旅行へ*1日目午後編*
触れるだけの口づけ。視覚を遮断した秀吉には、触れる唇の感触と、桜の香りだけが全てだ。
目を開けて
時が、止まった。
「……桜」
愛しい愛しい女の瞳から、滴が一筋流れて消えた。体の中を、大きな冷たい塊が滑り落ちていく。
「す、まん…っ!」
慌てて体を起こす秀吉を、不思議そうに見て。同じように体を起こしてそこで、初めて自分の涙に気付いた。
「え…なに、何で、泣い…」
濡れた瞳を拭うけれど、反対の目からも一筋。ぽろぽろと、堰を切ったように流れ出す涙。なぜこんなに溢れてくるのか、当の桜も理解できず戸惑う。
「ごめ…なさっ…」
「謝るな…悪かった…。嫌だったよな」
涙を流す桜を、腕の中に抱きしめたい。でもこれ以上嫌がられたくなくて、拳をぎゅっと握りしめる。
「嫌とかじゃ、ない…」
「え…」
乱暴に目元をこすって、桜は立ち上がる。
「顔…洗ってくる」
「おい、桜…」