第20章 家族というもの
当然のような表情でこちらを見据える中也を、私も同じように目を鋭くさせて見据える。
「身に付けたも何も…手前にそれを言う必要があんのかよ屑野郎」
屑野郎とは酷い言われようだ…まあ、彼女が気付いていたのかどうかを確かめたいがために直球に話題にしてしまったあたり、申し訳ないことをしてしまったなとは思うが。
「必要というよりは違和感があってね…彼女、一度自分を好いてくれた相手……それも自分も少なからず好意を寄せていた可能性のある人間に死なれてしまっているじゃないか?……それで、君みたいに愛してやまない相手に対して、よくもまあさっきみたいに強気であんな言葉を口にできたなって思ってさ」
少なくともあの子は、中也に何か手を出したような相手以外に向かって、決して“殺す”などとは口にしない。
下手にその言葉は使わない……自分が一番、生命の重みを知っているはずだから。
それを先程のやり取りで、私の中に巣食っていた常識は覆されてしまった。
「裏切ったら殺すから……そんな言い方、彼女がだよ?…それもよりによって君を相手にしてそんな事、普通言うかい?」
最近の態度からしてみてもそうだ、やけに懐きすぎている気さえする。
尋常じゃない程の信頼を寄せているというか、以前にも増して依存心が強くなっているというか…別の言い方をすれば、
「君の事を以前よりも縛り付けようとしているような…そんな素振りが見え見えとしている気がする。何かあるんだろう?君は元来、ああいったタイプの女性はその場で殺してさよならしたい程には鬱陶しがる質の人間なはずだ…何故、あの子はあんな甘え方を覚えたんだい?」
「…………そこまで疑問に思うのも手前くらいなもんだろうな。…そんなに気になるか、あいつと俺の事が?」
「まあ、これでも付き合いも長いほうだしね…それに、多分織田作は全部知っていただろうから」
そこなのだ、私が知りたいのは。
タイミングがなかったのも大きければ、時期が悪すぎたのもあるだろう。
しかし、恐らく彼は知っていた…私の前で、それを仄めかすような事を言っていた。
彼女がどんな企みを持っていたとしても、それを自分は許してしまうのだろうと言っていたから。
企み…だなんて、そんな言い方はするべきではないと思うのだけれど。
「彼女……いや、君達二人共。…一体、何を企んでいるんだい?」
