第5章 日常②。
それより!と復活した徹さんは興味津々といった様子で訊いてきた。
「朱里ちゃんなにして~るの?」
『待ち合わせです』
「ふぅん。誰と?あ、彼氏か!」
『違います』
「じゃあ友だちとか?」
『個人名を出すと面倒なことになりそうなので言いません。が、少なくとも徹さんのような人ではないことは確かです』
バッサリ切り捨てると、徹さんは納得したようにおおげさに頷いた。
「てことは、俺も知ってる人で、なおかつ俺程のイケメンではないってことか」
……………はぁ?
徹さんの言ったセリフを理解するのに時間がかかった。
俺程のイケメンではない?
『すいません岩泉さん、この人どんだけ自意識過剰なんですかね?』
「俺に聞くなよ…」
「てか及川のやついつもに増してウザいな」
「それな」
花巻さんの言葉に同意する松川さん。なるほど、いつもの徹さんはもう少しウザくないのか。これに付き合っている岩泉さんが、なんだかかわいそう。
「私服だと朱里ちゃんはいつもに増してかわいいね」
『かわいくないです。そんなに私服だと変わりますか?』
私服がかわいいと言われて、不思議に思った。今日の格好は、紺色のキュロットと、白いパーカー。背中にはミッキーのシルエットがプリントされている。
『とくに珍しい格好ではないですよね?』
「髪を結んでるからかな、かわいく見える」
そう言うと、徹さんは私の結ばれた髪にに手を伸ばした。あと数㎝で届きそうになったとき、その手は突如として振り払われた。
手を叩き落とした人物を見て、徹さんはピューと口笛を吹いた。
「なに触ろうとしてるんですか?」
なんと、怒りの形相で立つその人物は、私が待っていた影山くんだったのだ。そんな影山くんに徹さんはいつものように爽やかな、いやちょっと邪気の混じった笑顔を見せた。
「ヤッホー、トビオちゃん!」