My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
甘いものは苦手だ。
しかし以前雪に貰ったバレンタインのチョコには、嫌な思いなどしなかった。
そこに雪の思いが込められていると思えば、純粋に欲することができた。
今のこれも、それと同じだ。
重い沈黙を破るように、先に動いたのは神田だった。
徐に雪の下へ歩み寄りバタービールへと手を伸ばす。
何がきっかけでもいい。
雪と言葉を紡ぐ為の、きっかけとなれば。
「キュイッ!」
「…あ?」
しかしその細やかだが大きな神田の一歩は、小さな手に妨害された。
バタービールへと伸ばした手を叩いたのは、雪に抱かれていた小さな魔法動物。
尖った鼻先を神田へと向けると、気に入らないのかプイと顔を反らす。
そして、
「あ」
徐に顔を突っ込んだのはバタービールの中。
唖然と雪達が見る前で、瞬く間に飲み干してしまったのだ。
「ケプッ」
「良い飲みっぷりさな、お前…」
「というかニフラーってバタービール飲めるの?」
「…テメェ」
してやったりという仕草で神田を見上げるこのニフラーは、どうやら神田に良い感情は抱いていないらしい。
それは神田本人も感じ取れたようで、震える拳を握り上げた。
バタービールを奪われたことが癪に障ったのではない。
雪との接点を潰されたことに苛立ったのだ。
「いい度胸だなチビナス」
「ま、待ってユウ。相手は小さな動物だからっ」
ゴキゴキと拳を握る神田に、危機感を覚えた雪が後退る。
後方不注意だった体は、ドンと見知らぬ通行人にぶつかった。
「あっごめんなさ…ッ」
慌てて謝罪の為に振り返った雪の声が萎む。
その目は何かを捉えたかのように。
「どしたんさ? 雪」
ぶつかった相手がどうかしたのかとラビが問えば、しかし雪の目は後方の通行人になど向いていなかった。
それよりももっと先に続く横丁の広場。
大勢の人が行き交う人混みの中で、一点だけを見つめていた。
「あれって…」
雪の目が捉えていたのは、行き交う大勢の人の中で明らかに目立っていた男。
「ハグリッドだ…!」
巨人のような体を持つ、魔法使いだった。