第3章 もう一つの月見日和
ここ暫くより市中が少し寂しく感じるのは、祇園祭が終了して間もなくの事だったからだろう。
ただし、賑わっていようがそうでなかろうが、新選組の役割は何も変わることは無い。
それでも今日はあまり気にする事もない。風は優しく背中を押していく。
何処か暑さが抜けた風は、季節の節目を覚えるものだ。
「一君と非番の日に一緒に出かけるなんて、珍しい事もあるんだね。」
「市中に出向くついでにと使いを頼まれたのだが、どうも菓子には疎く、先日も批判の声が上がっていた。」
「ははっ、そういえばそうだったね。平助とか新八さんはやたら文句零してたけど、近藤さんの計らいで何とか完食したって感じだったしね。」
「ああ。何度も同じ失敗をしては皆に顔向け出来ん。故にお前に助言をと思ったのだ。」
「要らないところでも真面目だね。まあ、一君が失敗するところなんて物珍しいし、僕は新鮮で面白かったけどなぁ。」
からかいつつも律儀に付き合う様子を見ると、同じ思想を掲げ続けた大切な同士である事も伺える。
人斬り集団とは言われたものだが、この様なところを見ると、その考えも改めなければいけないのかもしれない。
「ところで総司、何処で茶菓子を調達するつもりなのだ。」
「船橋屋ってお店だよ。そこのお饅頭が結構美味しいって評判なんだよね。蕨餅も中々みたいだけど、今日はお饅頭。」
「成る程。覚えておこう。」