第48章 欠けた力
「ロー、その人、どうしたんだ? 急病人?」
クルーたちが近づいてくる中、1番にコハクがしゃがみこんだ。
「ああ、おそらく……」
「──おばさん!」
ローの言葉を遮ったのは、幼い少女の叫び声だった。
見ると、少し離れたところで、コハクと同じくらいの年頃の少女が、顔を真っ青にさせている。
「おばさん、どうして……ッ」
少女は よそ者のローたちなど、目に入らないかのように駆け寄ってきた。
「……カトレア。」
倒れたままの女が、か細い声で少女の名を呼ぶ。
「どうして、どうして…おばさんまで!」
少女の言い方からして、倒れたのはこの女だけではないようだ。
「お前、この人の家族か?」
コハクが少女に尋ねると、彼女は初めてローたちの存在に気づいたようで、涙を溜めた瞳を瞬かせた。
「…ううん、家族じゃ…ないけど、すごく…大切な人。」
初めて見る人間を、不審に思わないわけではなかったが、少女は素直に答えた。
だから、ローも続いて質問をする。
「他にも倒れた人間はいるのか。」
「たくさん…、たくさんいる。お医者さんも、ベンおじさんも、みんな…。」
医者が倒れたのか。
この規模の村に、そう何人も医者はいないだろう。
唯一の医者がいなくなれば、もう防ぎようがない。
異様な不気味さを漂わせる村。
外に出てこない村人。
この時点で、村を襲う恐怖の正体を知った。
原因不明な病ほど、恐ろしいものはない。
「でも、どうして…。さっき、お水に気をつければ、もう病気になることはないって教えたのに…。」
たぶん、遅かったのだ。
潜伏期間というものがある。
予防法を教えた時には、すでに感染していた。
「……?」
そこまで考えて、ふと疑問に思った。
なぜ少女は、予防法を知っているのか。
この病は、特定の冬島でもない限り、認知度がとても低い。
春島の、それもこんな少女が、どうして知っている。
「お前、なぜこの病がエキノコックス症だと知っている。」