第5章 冬へ…
霧が晴れる頃に 112話 冬休み開けて
冬休み開け、初日。
朝のホームルームで五十嵐が拳を握り、声を張る。
「野郎共!正月ボケしてんじゃねぇぞ!次は合唱コンクールだ!」
妙に力の入った掛け声に仁達、1年1組の生徒たちは困惑する。
旭中学校では運動会と合唱コンクールは2大イベント、理由は恐らくトロフィーが手に入るからだと思われる。
1組には運動会のときのトロフィーがあり、合唱コンクール
のトロフィーが手に入れば滅多に出ない2冠だ。
職員室ではどのクラスが勝つか、莫大な資金を賭けているとかいないとかいう噂も流れている。
とにかくそれほどまでに熱狂するコンクールなのだ。
「そこで、質問だ、このクラスでピアノ弾ける奴は誰だ」
五十嵐の唐突な質問の意図は恐らく伴奏者を決めるためだ。
五十嵐に言われ、おずおず手を挙げる人が5人ほど仁と楓も挙げている。
「で、やりたい人は?」
今度はシャッと音が出そうな程素早く全員手を下げる。
五十嵐は淡々と
「じゃあ今日の5時間目に音楽室借りれるから、そん時に全員に弾いてもらって決めるな、異論は認めん、解散!」
と、言ってしまい、文句を言う暇も無く解散になった。
すると席替えをして少し席が遠くなった林が楓を引っ張り駆け寄ってくる。
「ねぇ!なんでやんないの、2人とも!すごく上手なのに!」
いつの間にきたのか、慶も言い出す。
「そうだ、やれよ!たまにはお前も辛い目にあえコノヤロー!」
そういう慶の目は少し潤んでいる。
「…おい慶、お前冬休みなにがあった」
冬休み中、林とは何度かメールはしたが、慶と連絡を取ることはなかった。
「あー、慶ちゃん冬休みは散々だったからねぇ」
林がしみじみと話し始める。
「風邪ひいて…」
「おう」と、慶
「インフルエンザかかって…」
「はは…」と、仁
「やっと治ったら家族がかわるがわる風邪ひいて看病と買い物の日々…」
「…そう」と、楓
「だからコノヤロー!俺の不幸わけてやりたかった!」
仁の胸倉を掴み前後にガクガク揺されながら仁は言った
「俺が決めることじゃねぇぞ、多分投票だし」
眠そうな目をしながら言う仁に慶は諦め、自分の不幸をまた思いだしているように遠くを見る目になったのだった…